【必須】バッハの超基本!、という動画が伝える日本の音楽教育

youtubeにプラ管リコーダーと木管リコーダーの音の違いという動画が有ったので見たら、パソコンのスピーカーなのでほとんど音の違いが分からない。

 

それくらいプラ管のリコーダーは良く出来ているんだな~と思って右側に出ている動画一覧を何気なく見ると、【必須】バッハの超基本!という動画があった。

 

このようなお題の動画があると、私の性格的には、一瞬、疑心暗鬼というか、ホンマかいなという気持ちになる。

 

で、見ていないのにダメだろうと思ったままにしておくのも何なので、見てみた。

 

そしたら。

ヤッパリ!

笑えた。そして怒りと哀しみもじんわりと。

 

作者は芸大ピアノ科とミュンヘン音大を出たと経歴に書いてある森本麻衣さんという方。

動画を見てどのように思うかは人によって違うと思うが、言っている内容がひと昔・ふた昔以上前に一部で言われていたようなことなのだ。

 

最初はインベンション1番の16分音符の弾き方について。

レガートで弾くとバッハではなくなるので、レガートとスタッカートの中間で弾かなくてはならない、とのこと。グレン・グールドの弾き方に心酔しても良いが、それ以外はダメと言っちゃーおしまいよ。

この方の音楽性ではそういうことなのだろうけれど、それでは音楽が余りにも狭くなる。

そのような考え方をする人ばかりだと、ベートーベンは世に出られなかっただろう。

 

ノンレガートで弾く理由として、チェンバロは弦を爪で引っ掻いて音を出すので音がすぐに切れてしまうからとも言っているが、音楽愛好家なら誰でも知っているように、チェンバロは「ピアノで弾くときは16分音符をつなげて弾いてはダメ」と言うほど音が早く消えてしまうような楽器ではない。

もしそんなのだったら楽器として使い物にはならない。

チェンバロの特徴は、弾いた瞬間の音の立ち上がりが鋭いこと。

そもそも、バロック音楽をピアノで弾くときはチェンバロの真似をして弾きなさい、と言っているところで終わっている。

 

チェンバロが音を出す仕組みを説明する場面では、右手人差し指を水平にして、それに対して左手人差し指を上から下に動かして「コキンコキンと引っ掻く」と言っているが、実際は爪は上から下ではなく、下から上に跳ね上がって弦を引っ掻く(はじく)機構なので、この人はチェンバロの中を見たことも無ければ弾いたことも無いはず。

 

次は八分音符の弾き方。

八分音符が4つ並んでいたとすると、その4つは均一に同じ長さで弾かなければいけなくて、音によって少しだけ長くしたりするのは「ほんとに良くない」、とのこと。

 

これってジョーク?

もう笑いを通り越して、呆れてしまう。

 

管楽器や弦楽器をやっている人がこの動画を見たら、ほとんどの人は、は~??と思うのではないか。

信じたければ信じれば良いとは言えるが、ハッキリ言ってそれは間違っている。

バッハの曲に当時使われていたかどうか分からないが、この人はイネガルも知らないと思う。

技術的に均一に弾けるということと、均一に弾くということは別物である。

 

この人と同じようなことを言うのは、ピアノ弾きだけ。

ピアノ弾きでも言わない人はいるが、言う人は皆ピアノ弾きという現実。

どういうことだろう。

 

ITだけではなく、音楽教育にも日本は改革が必要だと思った次第。