リコーダー教室の思い出(朝日カルチャー湘南、青葉、NHKカルチャー町田)

先のブログを書いた後で、音痴の私が音程の大切さに気が付いたときのことを思い出しましたので、その経緯を書いておこうと思います。

 

まず、定年になって初めて入ったアンサンブル教室がJR藤沢駅ビルの上にある朝日カルチャー湘南でした。

そこで吹き始めてから、ときどき高橋明日香先生が手を上に上げたり下に下げたりされることに気が付いて、何だろう?と思ったら、私の出している音の高さが正しい音程よりも高かったり低かったりしているので、先生が「もっと上げて」とか「もっと下げて」と合図をして下さっていたことが分かりました。

 

それで音程の大切さに気が付いたかと言うと、そうではありませんでした。

「ふ~ん、高いんだ~・・・」と思うだけでした。

 

でも、その後も何度も先生が手の合図をされるので、コルグのチューナーを買って、どの程度音程が悪いのかを見てみました。

そしたら、針がほとんど真ん中に行きません。

それで、あっこりゃダメだと思ったかと言うと、そうでは有りません。ーー;

 

そんな針の状態を見ても、まだ「ふ~ん。これくらい外れてるんだ~・・・」と、思っただけでした。(鈍い;)

 

ハッキリ覚えてはいませんが、10セント以上外れている音も沢山有ったでしょう。

その外れ方がすごいのか大したこと無いのかさえ分からないようなレベルだったのですが、音程を気にするようにはなりましたので、チューナーを見ながら吹くように心がけるようになりました。

 

そうこうしているうちに、「リコーダーの広場」にメンバー募集の記事が出ていた横浜のリコーダーコンソート青葉さんにも入れて頂きました。

藤沢の朝日カルチャー以外のアンサンブルも経験してみたかったからですが、青葉さんがどれだけ上手な団体かも知らず、演奏を聴いたこともないのに、募集記事を見て何も考えずに入団を申し込んだのでした。

でも、そこでその後の私のリコーダー人生を変える衝撃の事実を知ることになります。

 

最初の日だったと思います。

自動販売機で缶コーヒーを買おうとしていたとき、コンソート青葉を指導されている渡辺清美先生が来られましたので、コンソート青葉ではどれくらいの精度で音程を合わせるのですか?とお聞きしたところ、「定期演奏会の前までには、チューナーの針が真ん中にピタッと止まっている状態にします」と仰ったのです。

しかも、「当然でしょ?」という表情で。

 

これには正直驚きました。

恥ずかしながら、20人以上いるアンサンブルで、メンバー全員が針が真ん中にピタリの完璧な音程で吹くなんて、そんなことが出来るなんて、考えたことも無かったからです。

 

その頃、コンソート青葉では、次回の定期演奏会で吹く曲を探すために次々と新曲を試し吹きしているところだったのですが、そこに加わって吹いてみて、初見なのに縦も横も合った非常に綺麗な演奏をされるのに驚いたばかりでしたので、普段から針ピタリを目指しているからこそ、初見でもこんなに綺麗な演奏になるのか・・・、と感心しました。

 

渡辺先生の指導でもう一つ大きかったのは「チューナーを必ず見ながら吹きなさい」という教えでした。

 

私は、定年になる数年前から、定年後に入るリコーダー教室を探す目的で、いくつかのアンサンブル教室を見学して回っていたのですが、「チューナーを見なさい」、と仰った先生は皆無でした。

 

渡辺先生以外の先生は、揃って「他の人の音を良く聴いて合わせなさい」とおっしゃいました。

「合わせて、合わせて。他の人の音を良く聴いて、聴いて!」とおっしゃいました。

 

でも、私には、誰の音に合わせれば良いのかが、分かりませんでした。

当然、他の人の音も聴きながら吹いているのですが、大勢の人の音が混ざっているので誰が正しい音程で吹いているのか聴き分けることが出来ないんです。

10人いたとすると、その10人全員が違う高さで吹いている可能性も大有りでした。

(もちろんセントレベルでです。)

 

「バスに合わせるらしいよ」と何度か聞きました。でもバスの音程が正しくなかったらどうするんでしょう。メチャメチャになりますよね。

結局、どうすれば正しく音が合うようになるのか、分からず仕舞いでした。

 

生徒からすると、吹くときにチューナーを見ると(音感が悪いことがバレそうで)何となく恥ずかしかったり、耳で合わせろと言われているのにチューナーを使ってズルをしている、と思われるのではと気になったりするのが一般的だったと思いますが、そんな中、渡辺先生が積極的にチューナーを使う指導をされていたことに接して、私は目の前が突然開けた思いがしました。

「チューナーを見ながら吹いて良いんだ!」と。

ベートーベンの運命の第4楽章の入り口の気分になりましたよ。^^

 

ちなみに、渡辺先生が出版された教則本にもチューナーを使いなさいと堂々と書かれています。

「チューナーに頼るのはどうも・・」と躊躇される方は多いと思いますが、使っているうちに正しい音程の感覚が自然と・かつ確実に身に付いて来るように感じましたので、音程に自信あり以外の方は試してみられると良いと思います。

 

その日から、私は罪の意識を持たずに大っぴらにチューナーを使えるようになりました。

そして、チューナーの中心に針がピタリと止まっているような演奏を目指して、それまでより遥かに強い拘りを持って音程に気を付けるようになりました。

 

そうしているうちに、バッハの無伴奏チェロ組曲を吹いていたとき、えっと思ったのです。

「今まで吹いていたときと、曲の景色が違う!」と思いました。

より正しい音程で吹くことで、和音の移り変わりの効果や美しさ・面白さが、よりハッキリと見えてくるようになったのです。

この曲は、本来はこんな景色だったのかー・・、と感動しました。

嬉しかったので、そのことを朝カル藤沢教室の高橋先生にご報告したことを覚えています。

高橋先生はふんふんと聞いて、ニコッとされました。

 

その後、定年近くに患った聴覚の病の後遺症が出て耳が突然痛くなってしまったため、青葉も朝カルも退団してリコーダーから少し離れていましたが、そのうち治って来ましたので、あまり大きな音がしない少人数のアンサンブル教室を見つけて入りました。

そこが、画面左の「発表会の演奏など」に録音が入っている町田のNHK文化センターのリコーダー教室でした。

 

その教室は退会を決めていた方が数名いて、私が入った直後に4人になりましたので、耳痛が心配な私にとって、とてもありがたい環境でした。

また、皆さんが練習熱心な方ばかりだったこともあって、レッスンが終わった後には自主練習を良くしました。(過去形で書いてますように、今は指の関節痛のため私はお休みしています。)

 

レッスンが有る日のスケジュールです。

10時~12時 カルチャーセンターでレッスン

12時~13時 みんなでランチ

13時~17時 近くの地区センターで自主練習。

自主練習が終わったら、受付で次回の練習会場を予約して解散です。

とても楽しく充実した一日でした。

 

町田のNHK文化センターのレッスン室は音響が非常に良いので(近江楽堂と同じくらい良いです。)、吹いていて楽しいです。

そして部屋が広く且つ綺麗です。

こだわりの指導をされる細岡ゆき先生も良い先生ですのでお薦めの教室です。

 

普通、アンサンブルの教室ではリコーダーの吹き方などの基本技を教えてくれることは殆んど有りませんが、細岡先生は音の出し方から徹底的に指導されます。

皆が習い始めの頃は音の出し方に常に30分かけましたが、1時間のときも結構ありました。

その次に音程合わせで可成りの時間を費やしましたので、曲を吹けたのはレッスンの最後に少しだけ、ということもありました。

ただし、皆が音の出し方に慣れ、後述しますが音程が良くなってからは、これらの基礎練習は行わないか、またはしたとしても5分くらいになりました。

 

基礎練習(というか正しい吹き方)へのこだわりだけではなく、曲を音楽的に仕上げていく手腕がまたすごいのです。

何でもない型通りのバロック曲だなと思った曲が、細岡先生にかかると極めて芸術的な音楽作品に一瞬にして変貌します。

そのたびに感動し、帰り道では皆ですごいねーと感激を語り合ったものです。

 

ちなみに、画面左にある「発表会の演奏など」に入っている「ダウランドの流れよ我が涙」の動画の、開始1分後に出て来る写真は、この教室で吹いているところの写真です。

写真の左端にちょこっと見えているのが細岡先生が指揮をされている手で、右端でバスを垂直に立てて吹いているのが私です。手しか写っていませんが・・・。

 

音程のことは、ランチや駅までの帰り道などでも良く話題になりました。

みんなが、きれいな演奏が出来るようになりたい、と思っていました。

 

そこで、全員がチューナーを見て吹くようにすることを提案し、その内そのようになったのですが、そうなったことで大きく変わったことが有ります。

 

それは、レッスンが始まる前の音出しというか、慣らしのために各自が適当に音をバラバラに吹いているときに聞こえてくるその音の響きが、全く変わったのです。

 

以前は、ピッチを合わせていると言っても、それはAという一つの音の高さだけが合っているだけであって、A以外の音の高さは実はバラバラだったので、4人が適当に音を出すと騒音にしかならなかったのですが、チューナーを使い、すべての音が(平均律ではあっても)正しい音程になってからは、オーケストラが演奏前にチューニングをしているときに聴こえるあの響きと同じになったのです。

 

「あっ、音程が合うと、こういう響きになるのか・・」、と思いました。

不協和音が鳴っているに、とても快い響きがするのです。

騒音だったのが、楽音に変わったのです。

 

これには驚きました。

そして、とても嬉しく思いました。

我々もとうとうこんな響きが出せるようになったんだ、と思ったからです。

 

振り返ってみると、もし自動販売機の前で渡辺先生が「当然でしょ?」という表情をされなかったら、こんな経験は無かったと思います。